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羽田空港新飛行ルート(南風時)と管制空域(2)

2016.10.30 改訂・改題しました。(長すぎてわかりにくかった部分を大幅にカット)


新飛行ルートについての公式説明は複数のサイトに分かれてありますが、現時点では、下記ページに掲載の「FAQ冊子」(PDF、3つある)をおすすめします。

取組状況・今後の進め方 - 羽田空港のこれから - 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/koku/haneda/plan/


(補足 8月1日)

7月29日に発表された「環境影響等に配慮した方策」から、このページの内容に関連する部分を抜粋しました。

南風運用時の滑走路別出発・到着便数を修正

20160729pdfp07

海ほたる航空灯台(*)の光度を10倍にすることで、北風好天時運用(富津沖海上ルート)の実施条件を緩和

20160729pdfp08

* 北風好天時運用を夜間も行うために設置されたものですが、10倍にすることで、どの程度の運用比率増加になると見積もっているのか、不明です。


下記の続きです。

羽田空港新飛行ルート(南風時)と管制空域(1)
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/airspace-issue.html

2016年4月19日に「南風時新飛行経路の高度引き上げ」という修正案が発表されました。

羽田空港機能強化に関する説明会(第2フェーズ)の結果概要及び環境影響に配慮した方策の検討
http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku07_hh_000088.html

Southerlyrev1604(図:国土交通省)

このほか、東京航空局の発注予定情報には下記のような項目が出ています。新ルート実施に向けた準備進展をうかがわせる動きが多くなってきました。

  • 東京国際空港ILS整備基本設計(東京国際空港にILSを整備するにあたって必要となる検討を行うための調査)
  • 東京国際空港16R,16L精密進入化外1件基本設計(航空灯火施設の撤去・設置等の基本設計)

以下、2016年4月19日修正案についてのメモです。

(飛行ルートについて)

ちょうど、現在の「北風好天時」運用(ILSとVISUAL進入の組合せ)を南北ひっくり返したような形です。

今回の修正案は「好天時」限定で、それ以外は先に提示されていたルートが使われます。

同時平行ILS進入では、両方のコースが平行になるところで1000feetの高度差を付ける必要があり、最終進入の直線部分がどうしても長くなってしまいます。両方または片方をvisual approachとすることで、上図に赤丸を付けたように、同じ高度での合流が可能となり、進入ルートが短縮できます。

South2visual

「~寄せられたご質問についてお答えします~(追補版)haneda_v02_04.pdf」所収の地図にもとづいて好天時ルート予想図を一部修正しました。>

(2017.3 都合により、下記各予想図の公開は取りやめます)

羽田空港機能強化「南風好天時」RNAV進入(着陸)ルート予想図
http://rnav.web.fc2.com/hnd2020/s2rte-v-201609.html

羽田空港機能強化「南風悪天時」ILS進入(着陸)ルート予想図
http://rnav.web.fc2.com/hnd2020/s2rte-i-201609.html 


2016.7末に発表された資料では、南風好天時の進入方式として「悪天候時以外に使用できるRNAV進入を導入する」とされています。

Newrternav160728(図:首都圏空港機能強化技術検討小委員会)

いわゆる"RNAV VISUAL"なのか、それとも、FAAが開発中という"EoR (Established on RNP)"のような新機軸が採用されるのか、詳細はまだわかりません。


「好天時」とは? Visual Approachが実施可能な天候と考えれば、、、

a) 観測された雲高の値に飛行場の標高を加えた値が最低誘導高度よりも500フィート以上高い

b) 地上視程が5キロメートル以上

航空路誌「ENR 1.11. 経路指定視認進入(CVA; Charted Visual Approach)」から

シドニー国際空港のVisual Approach公式解説動画(YouTube)

シドニーの平行滑走路は中心線の間隔が1037mに対して、羽田のA・C滑走路は1700mありますので、同時進入の実施条件は異なります。

平成26年度のデータによると、羽田着陸回数215,217回のうち

南風LDA進入=好天時(RW22 20.2%とRW23 8.0%の計)28.2%

南風ILS進入=悪天時(RW22 4.0%とRW23 1.6%の計)  5.6%

となっています。(LDA進入はVisual Approachとは異なりますが、同様に好天時のみ実施可)

以上から、おおざっぱに想定できますが、南風新ルートは15-19時の4時間限定です。

Rjttldg2014chibapref(図:千葉県))

出発ルートについては、方面別が入れ替えられ、B滑走路(RWY22)を離陸して右旋回で北上する案は事実上撤回されました。

南風新ルートでは、羽田で最長(3360m)のC滑走路が着陸専用となります。大型機の後ろに小型機が続くと間隔を大きくあける必要がありますが、到着順を調整して小型機をまとめて着陸させるような工夫をすれば、さらに回数上積みの可能性もあります。長い滑走路が着陸用では不満の声もありそうですが、離陸よりも着陸のほうが滑走路占有時間が長いので、離陸ルートと交差しない16Lを着陸用にするのは効率的です。

(2016.7の発表では、必要滑走路長2,500m以上の便はC滑走路から出発させる、となっています。)


(高度引き上げについて)

最近、ロンドン・ヒースロー空港で、騒音軽減のためにsteep angle approachの試行というものが行われていました。

どのような方法か、下記記事の図がわかりやすいです。

Heathrow launches steeper approach trial to reduce noise
http://your.heathrow.com/heathrow-launches-steeper-approach-trial-to-reduce-noise/

また、フランクフルト空港で最新の滑走路(07L/25R)は着陸専用ですが、両側にILSを2式ずつ設置して、3度と3.2度のグライドスロープ(GS)があります。

EDDF ILS Y RWY07L

Eddfilsy07

フランクフルト25R着陸(YouTube)

着陸直前にローカライザーアンテナ(反対側07LのILS)が2つ見えます。手前がCAT-3で奥がCAT-1となっています。

ヒースローでのsteep angle試行については、イギリスのパイロット団体(BALPA)が「騒音はむしろ悪化する」と指摘している、との記事もありました。騒音軽減効果の評価は必ずしも定まっていない方法のようでもあります。

羽田新飛行ルートの高度上げ修正案では、降下角を大きくするという方法は取られていません。(よって、3000feet以下の最終進入部分については高度の変更なし)

そして、高度上げは、なぜか便数の少ない16R(A滑走路)のほうとなっています。理由が騒音対策なら、言うまでもなく、便数の多いほうを高くしたほうが、効果は大きくなります。

16R着陸 13便/時間
16L着陸 31便/時間

16Lについては、千葉と東京の境界に黄色で「6000ft」と大書されていますが、ここはルートが変更されていて、高度を上げたと言えるのかどうか、判別不能です。

もう一つ「周辺の飛行場に離着陸する航空機との安全間隔を確保する観点」という理由についてはどうでしょうか。「周辺の飛行場」とはどこのことなのか、書いてありませんが、東京ヘリポートや赤坂プレスセンターのことではなさそうです。

South2iruma

大きく東へ振られた16L進入ルートは横田空域に入らず、東京進入管制区の中におさまります。

一方、16Rから3度の降下パスを延ばしていくと、光が丘(練馬区)を4500feetで通過します。こちらは横田空域にはみ出していますが、2000~3000feetを通っているらしい入間GCAの誘導パターンと何とか高度差で分離できる、ということかもしれません。

Irumagcaptn(図:航空重大インシデント調査報告書 AI2006-2)

入間GCAのパターン範囲については、正確な位置は不明です。上図のほか、公開されている複数の情報から推測しました(左側の赤茶色枠)↓

South2iruma

新飛行ルート(南風案)と横田空域の関係、調整(協議)の進捗などについて、CANSOの下記刊行物(Airspace issue 32 2016Q1、PDF)に記述があります。

https://www.canso.org/sites/default/files/Airspace%20Q1%202016%20Article%20Tokyo%20Capacity.pdf

JCAB(航空局)幹部の話として、「すでに北風時に運用している同時平行進入(滑走路34Lと34R)と同じことを反対側の16Lと16Rで行うためには、横田空域内に飛行ルートを通す必要が出てくる」「安全を損なわずに新飛行ルートを実施する方法を見出すために、軍当局者と密接に協議している」などとあります。

横田空域の使用許可、あるいは一部返還の交渉がまとまれば、新飛行ルート実施に向けて大きく前進となるでしょう。


(追記 2016.12.31)

2016年12月上旬、航空局の飛行検査機(小型ジェット機)により、羽田空港滑走路16L/R(A/C滑走路)に設置されたPAPI(進入角指示灯)の飛行検査(設備点検)が行われていました。

この飛行検査の計画は東京航空局から告知されています。

Flcrjtt161202(表:東京航空局)

これは、2019年からの実施が計画されている新飛行ルートの試験飛行ではありませんが、見方によっては、新しい南風進入ルートの飛行ルートそのものには特に問題がないことが実証されている、とも考えられます。

PAPI-16L(C滑走路)の検査飛行ルート↓

Flcpapi16l1612(図:東京航空局)

PAPI-16Rの(A滑走路)検査飛行ルート↓

Flcpapi16r1612(図:東京航空局)

羽田の飛行検査は発着の少ない時間帯という理由で早朝(6-8時)に実施されます。「飛行検査を行う場合は、パイロットが目視で他の航空機や雲、山岳、ビルなどから安全な間隔を確保して飛行しなければなりません。」(「飛行検査のよくある質問」東京航空局)という条件があるため、天候による日程変更も多くあるようです。

Flightradar24に表示された飛行検査機の航跡↓

Flc1612062230z


(追記 2017.1.15)

羽田空港新飛行ルート(特に、南風時進入ルート)に関する三大デマ(私見です)

(1)「横田空域が返還されれば、都心上空を飛行する必要はなくなる」

(2)「大都市上空の低空飛行は世界的に例がない」

(3)「飛行ルートには幅があるので、都内のどこを飛行してもおかしくない」

(1)については、去る1月10日、共同通信が「新飛行ルートの横田空域通過について、米側が実務レベルで了承した」と、スクープ的に報じたことで明確に否定された格好。

(2)事例として、YouTube(動画サイト)から市街地上空からの進入・着陸を収集したので、後ろにリンクを貼ります。

(3)航空路の保護区域と混同しているのか、「左右5マイルの幅」などと説く者あり。が、新たな同時平行進入ルートで使われるA・C滑走路の間隔は約1700mで、そんなにズレると隣の飛行機にぶつかります。幅があるどころか、各国の主要空港で起こっているのは、逆の話。航法精度が上がり、進入ルートがあまりに正確なため、騒音影響が所定ルート下の狭い範囲に集中してしまう(不公平)という問題。(逆に、航空機メーカー側は、影響範囲を限定できるのが利点、と言う)

福岡空港

大阪(伊丹)空港

サンディエゴ空港(米国・カリフォルニア)

サンパウロ・コンゴニャス空港(ブラジル)

ダラス・ラブフィールド空港(米国・テキサス州)

ラガーディア空港(米国・ニューヨーク)

このExpressway Visual Approachで、左旋回して滑走路に向かうあたりの市街地はFlushing(フラッシング)地区の繁華なチャイナタウンです。飛行高度は5~600feet位。

(参考)各空港滑走路本数と発着回数(2015暦年)
羽田  4 438,542
福岡  1 172,964
大阪  2 139,450
サンディエゴ 1 193,712
コンゴニャス 2 213,833
ラガーディア 2 368,362
ヒースロー  2 474,103

London Heathrow Holding(ロンドン・ヒースロー、上空待機)


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