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横田空域と羽田空港出発ルート(航跡)

(関連記事)

飛行ルートの「延伸率」と横田空域について考える(1)
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/hnditm-20min-ex.html


下記ページの補足として作成しました。(横田空域がなくなれば、羽田発着便のフライト時間が20分も短縮可能との説が流されていますが、それはありえないだろう、という趣旨のデータです)

「横田進入管制空域」図
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-1d75.html

横田空域の上限高度が最も高いところで7000m (FL230)なのは事実ですが、羽田出発便の大半は、そこは通りません。(富山、能登のみ)

西日本方面便の大半が通過する富士山東側のエリアは上限5000m (FL160)です。

「高さが7000mもあるので飛び越えるのが大変」というのは、印象操作という感じがします。

図の上方、赤い枠を付けた部分です。

Hnddirections


羽田→富山線

羽田離陸からHILLSポイント(東十条)まで、北風時の出発ルート例(2017年2月)です。

Hillsfl170

http://arctica1.cocolog-nifty.com/fw3/170202ana315.html

HILLSポイント(東十条)から西は8000feet以下が横田空域となっており、ここを「9000feet以上FL150 (15000feet)以下」で通過するきまりです。しかし、この便はすでにFL150以上に達していました。出発管制から航空路管制に引き継がれて、FL150以上に上昇する許可を得たと思われます。

横田空域が理由の「9000feet以上」という高度制限は余裕でクリアしていて、まったく問題になりません。

逆に、上昇が早すぎると「FL150以下」のほうに引っ掛かり、一時的に水平飛行(レベルオフ)するという非効率につながります。FL150とは東京進入管制区、すなわち羽田・成田空域の上限。その上は、東京航空交通管制部(以下、東京ACC)が航空路管制を行っています。

できるだけ迅速に上昇したいのは、高高度を飛行するほうが燃料消費が減る(つまり、効率が良い)から、というのが主な理由と考えられます。

ターボファンで飛行する旅客機の単位時間当たりの燃料消費率は高々度ほど低くなり、3万フィートを基準とすると1万フィートでは2倍、2万フィートでは1.3倍であると言われている。(2015「ATSシンポジウム」資料)

一方、ルートの迂回ということについては、羽田からHILLSまでの直線距離に比べて、実際の飛行距離は約2倍になっています。このようなルートを取っているのは、横田空域ではなく、騒音影響の軽減に理由を求めるほうが妥当でしょう。増便(増枠)のために計画されている、荒川上空を上昇する出発ルートになれば、二次的な効果として1.3倍程度に距離短縮が期待できます。

Hillsriver

HILLSから先の飛行ルートは富山までほぼ一直線です。

羽田空港の標準出発方式(SID)のひとつ、KANEK TWO DEPARTURE(小松、富山、能登、セントレア行きが使用)

Kanek2rdep(図:航空路誌)


(1)羽田→大阪(伊丹)

160128ana27

(図の説明)

黒枠:横田空域の範囲

赤色線:大圏ルート(空港間の最短距離)

緑色線:航跡

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160128ana27.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/ANA27/history/20160128/0500Z/RJTT/RJOO/tracklog

離陸時刻 05:20:00UTC

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
05:26:10    35.2831    139.7059    11,600

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
05:34:18    35.1004    138.7541

羽田→A 直行 57NM
飛行距離/時間 72NM/14分

1NM (nautical mile) = 1.852km

上記は、飛行場標点からA地点(図中に赤茶色の枠)までの最短距離に対して、どのくらい迂回しているかの目安として記載しました。飛行距離は、飛行場標点から航跡上の各地点を通過してA地点までとしています。

これ以上短縮できない距離として大圏ルートと比較しているだけで、横田空域を避けているから長くなっているという趣旨ではありません。

なお、多くの空港で、飛行場標点は滑走路の中央あたりに置かれていますが、羽田の標点は第1ターミナルの24番スポット付近にあります。

FlightAwareデータの見方については、ページ末尾に補足します。


(考察 1)

1.飛行距離について

  • 図を一瞥するだけでも、大して迂回はしていないように見えます。
  • (それは不可能ですが)仮に最短距離(大圏ルート)で飛行できたとしても、最大5分程度しか短縮できません。
  • 標準出発ルート(SID)よりも小回りで(ショートカットして、効率よく)飛行しています。

2.高度制限について

  • 各方面とも、9000feet以上(横田空域上限+1000feet)で通過するよう指定されているポイントを12,000~17,000feetで通過しています。SIDを端折って飛行しているにもかかわらず、十分に余裕があります。
  • よって、もし「急上昇」しているように感じられるとすれば、横田空域を回避するためというより、別の目的でそうしているという解釈が成り立ちます。(早めに効率のよい高度に上昇する、地上への騒音影響軽減、など)
  • 羽田離陸から16,000feetまでの上昇率/分を調べてみると、近距離便については、おおむね2200~2500feetです。(海外を含め)他空港と変わりありません。
  • 横田基地周囲の横田空域は、現状では上限12000feetと低く、横田から南向きに離陸する(RWY18)場合、効率の悪い上昇(2000feet/min未満)になっています。

(資料)主要機種の離着陸性能

Performanceeurocontrol

SPD/ROCは5000feetまでの速度と上昇率/分

EurocontrolのAircraft Performance Databaseから抜粋しました。

https://contentzone.eurocontrol.int/aircraftperformance/


(考察 2)

今でも(デマの根拠として、ですが)よく引用されている、横田空域迂回のために

「羽田発大阪行きの消費燃料約1年分に相当する約11万klの燃料が年間にムダになっている」

との試算は、定期航空協会が2006年5月に発表した「横田空域の民間航空機利用について―空域の早期返還―」の最終ページに載っています。関係官庁への要望書「■横田空域の早期返還に関する要望について」の付属資料です。

定航協は、その約10日後に下記コメントを発表。

■横田空域の一部の民間開放に対する協会コメント
(2006年5月22日)
http://www.teikokyo.gr.jp/re060522.html

さらに、半年後には空域削減幅の合意について歓迎するコメントを発表。

■横田空域の削減幅決定に対する協会コメント
(2006年10月27日)
http://www.teikokyo.gr.jp/re061027.html

実際の空域削減と新飛行ルート(RNAV出発方式)の設定は、2008年9月から実施されました。

横田空域の一部削減に伴う羽田空港の出発経路の設定について
平成20年7月1日 航空局
http://www.mlit.go.jp/report/press/cab13_hh_000003.html

このような流れで、定航協が要望していた事項の大部分は実務的に解決済み。

横田空域の全部が民間機に開放されれば絶大な効果がある、と信じて疑わない方がいますが、具体論を欠いた空想に過ぎません。


(考察 3)

”横田空域デマ”に関しては、「軍民共用化」という政策を掲げている東京都を、有力な発生源の一つとみなすことができます。

「軍民共用化には絶対反対」と主張する瑞穂町は、2015年8月に発表した文書の中で、いみじくも指摘しています。

日米両政府は共同使用に関する適切な決定を行うとされているが、期限とされた平成19年10月を過ぎても何ら結果が示されていない。

東京都による共用化のもくろみは事実上頓挫した一方で、2012年に航空自衛隊横田基地が開設され、「軍軍共用化」が実施されています。

その後も都は、「横田空域の全面返還を実現して合理的な航空路を設定したい」などと述べています。騒音影響に配慮した飛行ルートに変えてほしい、といった要求ならばまだわかりますが、何をもって「合理的な航空路」と称するのか、意味不明です。

都の言う「合理的」とは、低高度空域を羽田発着機に使わせることだとするなら、都西部では(民間機による)航空機騒音の増大という負の効果を伴うことにもなります。(ただし、現状の運用にて、羽田発着機が横田空域に入る必要性があるとは考えられませんが)

基地対策は都の本来業務である以上、空域利用の変更によって、米軍機・自衛隊機の飛行ルートがどう変わるのか(変えたいのか)についても説明してしかるべきでしょう。

ここ数年間で新たに共用化された百里(茨城)や岩国の事例を見れば、共用化の可否と進入管制業務(空域)の管轄は無関係と言えます。

都が今後も「軍民共用化」の旗を降ろさないなら、的外れな空域問題を主張するよりも、周辺住民や自治体の信頼と理解を得ることが先決のはず。空疎なスローガンを掲げるだけで、これまでの総括も打開策もなく、税金と時間の空費を続けることは大いに問題です。

2015年4月に発表された「横田基地の軍民共用化に向けて」と題する書面(10ページ、PDF)には、民航ターミナルの位置案すら示されていません。10年以上にもわたって検討を重ねてきたという成果がこんなものでよいのでしょうか。


その他

自衛隊が進入管制業務を行っている民間空港: 新千歳、山口宇部、北九州

米軍が進入管制業務を行っている民間空港: 松山


羽田←→大阪(伊丹)の平均飛行時間は平均50分弱

Cara2016blocktime(出典:将来の航空交通システムに関する推進協議会)


(2)羽田→中部

160128jal201

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160128jal201.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/JAL201/history/20160128/2305Z/RJTT/RJGG/tracklog

離陸時刻 23:24:00 UTC

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
23:31:28    35.7669    139.7082    16,100

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
23:40:07    35.9468    138.7364

羽田→A 直行 56NM
飛行距離/時間 76NM/16分


(3)羽田→那覇

160128sky521

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160128sky521.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/SKY521/history/20160128/0805Z/RJTT/ROAH/tracklog

離陸時刻 08:26 UTC※

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
08:31:28    35.2814    139.7055    14,200

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
08:40:40    35.0573    138.7553

羽田→A 直行 59NM
飛行距離/時間 73NM/14分


(4)羽田→神戸

160130ana411

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160130ana411.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/ANA411/history/20160130/2130Z/RJTT/RJBE/tracklog

離陸時刻 21:42:00 UTC

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
21:47:03    35.4398    139.6706    12,200

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
21:55:20    35.3670    138.7262

羽田→A 直行 53NM
飛行距離/時間 65NM/13分


(5)羽田→鳥取

160204ana295

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160204ana295.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/ANA295/history/20160204/0055Z/RJTT/RJOR/tracklog

離陸時刻 01:05:00 UTC

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
01:11:46    35.7416    139.6728    17,700

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
01:20:04    35.6771    138.7400

羽田→A 直行 52NM
飛行距離/時間 75NM/15分


(6)羽田→福岡(南風運用時、RWY16Lから反時計回り出発)

160204sfj53

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160204sfj53.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/SFJ53/history/20160204/0930Z/RJTT/RJFF/tracklog

離陸時刻 09:40:08 UTC※(1700ft)

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
09:46:33    35.6777    139.6778    16,700

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
09:55:14    35.5814    138.7341

羽田→A 直行 51NM
飛行距離/時間 74NM/15分


(7)羽田→福岡(北風運用時、RWY05から時計回り出発)

160205jal323

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160205jal323.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/JAL323/history/20160205/0610Z/RJTT/RJFF/tracklog

離陸時刻 06:36:00 UTC

横田空域(8000feet以下)の上空に差し掛かった時刻、位置、高度
06:40:17    35.5741    139.6684    12,900

横田空域上空を抜けた時刻と位置(A:赤茶枠)
06:47:45    35.4959    138.7401

羽田→A 直行 51NM
飛行距離/時間 63NM/12分


(8)羽田→ジャカルタ

地図URL(スマホ未対応)
http://rnav.web.fc2.com/t2/160216gia875.html

航跡データ取得元
http://flightaware.com/live/flight/GIA875/history/20160216/0304Z/RJTT/WIII/tracklog

データは省略

国内線と比較すると、かなり長距離のフライトですが、高度制限も問題なくクリアされています。(出発方式は、大阪、沖縄などと同じJYOGA1)


(参考)FlightAwareデータの見方

Flightawaresmp1

(1)便名
all flightsのリンクから飛行中のANA全便のリストを表示

"All Nippon"はコールサイン

(2)
同区間のフライトのリストを表示

(3)
Durationは正味の飛行時間

(4)
track log & graph(航跡ログとグラフ)

(5)
距離

(6)
緑の線は、ADS-Bや管制当局(米国、オーストラリアなど)のデータから実際の航跡が取得、記録されている部分。

白い線は推測位置、最短ルート。

Flightawaresmp2

航空会社からゲート出発時刻、離陸時刻、着陸時刻、ゲート到着時刻が提供されている場合には、地上滑走時間と飛行時間を区分して表示されています。

それ以外の場合は、ADS-B等による追跡とFlightAwareによる推測による表示がされています。

Flightawaresmp3


定期便(羽田→富山)が横田空域内を通過した事例の航跡図(2017.2)

この地点はFL230(約7000m)まで横田空域ですが、FL200で通過しています。

Areahfl200

http://arctica1.cocolog-nifty.com/fw3/170202ana315.html

大半はFL240以上で(横田空域には入らずに)飛行していますが、緊急時に限らず、管制許可を得て通過するケースがあります。

LiveATCによれば、飛行高度を下げてよいというクリアランス(実質的に横田空域の通過許可でもある)は、東京ACCから出されていました。(東京ACCが横田進入管制所からOKを取っていると思われるが、詳細は不明)

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