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飛行ルートの「延伸率」と横田空域について考える(2)

下記の続きです。

飛行ルートの「延伸率」と横田空域について考える(1)
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/hnditm-20min-ex.html


「進入管制区」とは何か。基本知識としてお勧めします。(特に、「管制圏」という用語とは区別しないと話が通じません)

進入管制区・特別管制区(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000342.html

航空管制業務について(同)
http://www.mlit.go.jp/common/000164767.pdf


「横田空域問題」について、今でもよく引用されている図(定期航空協会、2006年5月)があります。

見覚えのある方も多いことと思いますが、なにせ10年も前、つまり昔の話です。

Teikokyo200605

羽田空港からの出発経路

西方面行きの出発便は、大阪行き(*)を除き、
横田空域を避けて、その上空を通過しなけれ
ばなりません。

このため、羽田空港を離陸した航空機は、
あらかじめ東京湾内で大回りしながら、横田
空域上空を飛び越えるための高度まで上昇
を行う必要があります。

(*) 羽田発大阪行きについては、横田空域が通過可能
となるよう、昭和37年に運輸省と米軍との間で特別
に措置されましたが、横田空域通過後、最適飛行高
度まで再上昇しなければならず、依然、非効率な飛
行となっています。

横田空域の民間航空機利用について - 定期航空協会
http://www.teikokyo.gr.jp/pdf/20060511_pamphlet.pdf

この半年後、定航協は、要望していた問題に解決の道筋がついたことについて謝辞を述べています。

今般、横田空域の具体的な空域の削減幅が合意されたことについて、民間航空機の効率的な飛行の実現につながるものとして評価するとともに、日米関係当局の多大なる努力に感謝申し上げます。

■横田空域の削減幅決定に対する協会コメント
(2006年10月27日)
http://www.teikokyo.gr.jp/re061027.html

さらに、「定期航空協会 2007年度年次総会資料」より↓

横田空域の削減について、2006年5月に国土交通省航空局及び関係省庁へ要望書を提出するとともに、その内容について記者会見を行い、世論の喚起を図った。その結果、同年10月の日米合同委員会第66回民間航空分科委員会において、横田空域の一部削減後の具体像が示された(削減時期は2008年9月)。また、削減が実施されるまでの暫定措置として、横田進入管制所が同空域を使用しない場合、羽田空港から北部九州方面等に出発する航空機が、従来より2,000フィート低い高度で飛行可能となった。(2006年9月28日から実施)

定航協の発表を素直に読めば、横田空域が羽田発着機の効率的な飛行の妨げになっていたのは過去の話で、大筋では解決済みということになります。

いつまでも蒸し返して「大問題だ」と騒いでいる方々は、本当に10年分の改善や変化を見落としているのか。それとも、何か目的があって、つまり、問題があることにしておいたほうが都合がいいので、気づかないふりをしてデマを流しているのか、定かではありません。

いずれにしろ、古い情報や図を使って、思考停止に陥っている(としか思えない)例が非常に多いことは確かです。

2008年9月、羽田出発ルートの大回りや急上昇は解消

(空域削減前)2006年当時の西日本方面への出発方式 ZAMA 6 DEPARTURE

Zama6dep2006(出典:DOD FLIP)

(空域削減後)2008年9月から実施 BAYGE 1 DEPARTURE

出発ルート上の高度制限が大幅に引き下げられ、旋回もゆるやかな形に変わりました。ZAMA(相模総合補給廠内にあった無線標識)に集中していた出発ルートの分散も図られています。

Baygeone200809(出典:航空路誌)

(現在)出発ルートをショートカットして飛行。離陸後3~4分で9000feetへ。急上昇のように感じられても、上昇率を調べると(海外を含め)他空港と変わりありません。

Fr24160621yanag(Flightradar24)

別の便。YANAG出発方式(水色線)よりかなり小回りの航跡(緑色線)ですが、BAYGEポイントでは12000feet以上まで上昇しています。(高度制限がきびしいならショートカットしないはず)

Fawjl239160628

海上で高度を上げてから西進するのはムダだと説く方も多いですが、このような↓運用を拡大するとか、いっそのこと北方向に直進上昇することも可能でしょう。

ハミングバード出発方式(現在は、朝7時半過ぎの3便だけ)

Fr24hummi1jl221(Flightradar24)

2010年10月羽田・成田の到着ルート分離

羽田D滑走路運用開始に合わせて航空路が再編されました。(その前、2010.1.14には羽田と成田の進入管制区が統合)

大阪→羽田/成田の到着ルートで例示します。(緑:羽田、橙:成田)

旧ルート

200810enrc2(ENRC 2008.10)

現在のルート

201603enrc2(ENRC 2016.3)

北京、ソウルなどから成田への到着ルートは、現在、北から時計回りになっています。(時間帯により羽田行きもこちらのルートへ)

Routerksirjaa(SkyVector)


西・南からの到着機が房総半島の南から進入するのは、横田空域を避けているからで、不当に遠回りを強いられている、という話もよく出ています。

しかし、出発ルートと到着ルートの分離、使用頻度の高い滑走路の方向、また、東行き便は上空風の恩恵を受けられることを考えれば、合理的な配置に見えます。(距離が延びても時間はあまり変わらない。後述)

北風(悪天)時のILS進入では、ARLONポイント(鹿野山の横)付近までには最終進入ルートに乗ります。30度以内の角度で合流するため、到着ルートを横田空域の南端あたりにもってくるのは難しそうです。

Rjttils34larlon

スムーズに流れていれば、ARLONへショートカットしています。

Fr24ils34larlon(出典: Flightradar24)


「民間機は飛行禁止」ではない横田空域

横田空域内を飛行する民間定期便をFlightradar24で見る

羽田→能登

Fr24fl200dcthappo

調布発着の離島フライト以外にも、民間定期便が横田空域内を飛行しています。

ほとんどの場合、横田空域の上限より上を飛んでいますが、気象条件などで低高度が使われることも珍しくありません。

Fr24160531nh367

VFR(有視界飛行方式)については、各飛行場の管制圏以外は管制許可不要。民間小型機も多数飛行しています。


かなり迂回している感じの成田発着ルート(横田空域ではありません)

R121detourenrc

紫:成田到着、青、成田出発、赤:R-121訓練区域


書き足してまた長くなりました。(3)に続きます。

飛行ルートの「延伸率」と横田空域について考える(3)
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