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羽田空港新飛行ルート(南風時)と管制空域(1)

2016.10.30 改訂・改題しました。(長すぎてわかりにくかった部分を大幅にカット)


2020年に向けて計画されている、羽田空港の都心上空飛行ルート。

国と自治体の間では、すでに今年1月までに話が付いた、と報じられました。

都や神奈川県、低高度の飛行ルート容認 羽田の発着枠拡大
2015/1/21 19:28
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H5H_R20C15A1PP8000/

1年ほどウォッチしてきましたが、新飛行ルートに目立った反対論は出ていません。(今までのところ、ほとんど見当たらない)

よって、残る大きな課題は、新飛行ルートが横田進入管制空域にはみ出してしまうことについて、米軍などとの調整、ということになりそうです。

下図(「南風案2」の進入ルート)で南北方向に縦断している黒線から西側(8000フィート以下)がいわゆる「横田空域」です。(この周辺は主に航空自衛隊入間基地が使用)

Hndsouthparallel

「南風案2」進入ルート予想(+横田空域との位置関係)図


(2015年)6月に下記のような番組が放送され、

シリーズ横田基地(3)日本の中の「アメリカの空」
http://www.nhk.or.jp/shutoken/net/report/20150604.html

NHKの取材に対して在日アメリカ軍の広報担当者は「空域の通過について日本側と話をしているのは事実だが、通過を認めるかどうかなど内容については答えられない」としています。

と、空域調整の話合いが始まっているかのように伝えられていました。

ところが、7月末、国土交通省のホームページ内にこんな記事が、、、

(問)先程、幹事社質問にあった羽田の新ルートの件で1つお尋ねなんですけれど、国交省が示しているルート図ですと埼玉県上空の一部が(米軍が管理する)横田空域に入っています。
そうしますと空域の一部返還なり運用の大幅見直しなりが必要になってくると思うのですが、現時点でそのことへの対応はどうなっていますか。

(答)現在、羽田空港機能強化のための方策としてご提案をさせて頂いている飛行経路の見直し案につきましては、その一部が横田空域内を通過する案になっています。
横田空域というのは埼玉県にも及ぶ非常に広い空域なものですから、そこを通過する案になっています。
このため国交省としましては、関係省庁と連携しながら新たな飛行経路の実現に向けて、そういう意味では米軍と所要の調整を図って参りたいと考えています。

(問)現時点ではまだ日米合同委員会なりで、米軍との調整に入っていないということですか。

(答)これからということであります。

太田大臣会見要旨
2015年7月21日(火) 10:37 ~ 10:47
国土交通省会見室
太田昭宏 大臣
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin150721.html

空域調整が必要なことは最初からわかっているのに、平然と「これからということであります。」とは、少々唖然としました。

羽田空港 発着枠増強策でRWY16同時平行ILS進入を検討(2014.7.9)
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/rwy16ils-c488.html

せっかく引き出された重要事実ですが、ニュースに取り上げられることはなかったようです。調整未着手の理由、いつから始めるのか、見込みはどうなのか、間に合わない場合はどうするのか、など、まったく情報がありません。

ILS設置場所の整備など数年かかる工事が必要と説明されているので、あまり時間の余裕はないと思いますが、なにか秘策があるのか、今後の動向に注目しています。

(その後の報道では、ILS設置工事などは十分間に合うもよう。当初、かなりサバを読んだ工期を言っていた?)

Mlit001047128pdf34(「首都圏空港の機能強化策について」2014.7 [別紙3]中間取りまとめ参考資料)

Mlit00106439pdf42(「首都圏空港の機能強化について」2014.12)

工期は、5年もかからないとしても、A滑走路の南端(つまり海上)にローカライザーを載せる台のようなもの?を設置するような工事を、空港運用に支障のないように(夜間中心で)行うとすれば、それなりの期間は必要では?


「(地元自治体や議会の)承認や了解について法令上の定めはない」との政府答弁書出る(2016.3.29 参議院)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/190/syuh/s190084.htm


(必読資料)

国土交通省から検討経緯の公式発表

首都圏空港機能強化技術検討小委員会
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s304_shutokenkuko01.html

首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会
http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk7_000005.html

首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめについて
http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku01_hh_000053.html


(追記 2015.12.30)

横田の空域があることによって全部それを避けなきゃいけないということで生まれているわけですこの問題は。
横田基地を中心として7000m規模の制限空域がつけられている。
もし横田空域を通してくれるのであれば都心の上空を飛ばないで済む。
茨城の周辺の海の側から入ってくれば、人口密集地を飛ぶということは避けられます。
羽田の増便を果たしていくためには、どうしても空域との折衝がないと、都民に迷惑をかけるということは免れないんじゃないかと思ってますね。

都心上空を飛行する羽田新ルート案。背景に「基地問題」(TBSラジオ)
http://www.tbsradio.jp/stand-by/2015/12/post_8275.html

放送を聞いていませんが、書き起こされたコメント(上記引用)を読む限りでは、増便そのものに反対というわけではない、と読めます。

しかし、横田空域を使えれば、都心上空を飛ばないルートが可能だというのですが、具体的にどんな飛行ルートを想定しているのか、「茨城の周辺の海の側から進入すれば」では意味不明です。横田空域は茨城県にはかかっておらず、説明になっていません。

ILSを使って同時平行着陸を行うためには、横田空域がどこにあろうと、最終進入ルートは滑走路の延長線上にまっすぐ引くことになります。(上に貼った国交省説明資料に書かれているとおり)

なによりも、新飛行ルート(南風時到着)は横田空域内を通過するわけで、「横田空域を通してくれるのであれば都心の上空を飛ばないで済む。」とは、根本的な事実誤認があります。


「横田空域を避けるために新飛行ルートが計画されている」というデマは、いつまでも根強く続いています。

こうしたデマ情報の発信元の一つは共産党と見られます。新宿区の担当者を通じて、国交省からやんわりと否定されています。下記記事参照。

2016年第1回定例会 一般質問 | 日本共産党 新宿区議団
http://www.jcp-shinjuku.com/parliament_act/%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%96%E5%B9%B4%E7%AC%AC%EF%BC%91%E5%9B%9E%E5%AE%9A%E4%BE%8B%E4%BC%9A%E3%80%80%E4%B8%80%E8%88%AC%E8%B3%AA%E5%95%8F-2/


A滑走路南端のローカライザー(LOC)設置用地についての検討始まる?

羽田A滑走路南側、水面の人工地盤も検討
http://www.kentsu.co.jp/webnews/html_top/160129500020.html


(参考)

航路・高度と騒音値を知るには↓(成田、羽田)

航跡|成田空港環境こみゅにてぃ
http://airport-community.naa.jp/course/

羽田空港飛行コースホームページ(利用者登録必要)
https://www.franomo.mlit.go.jp/


着陸をやり直した(ゴーアラウンド)航空機が渋谷や新宿上空を4000feet程度で飛行することがよくあります。

2010年にD滑走路がオープンして以来の運用方法であり、今回の新飛行ルート計画とは無関係です。

羽田飛行コース公開14:04


国際線増便には駐機場増設という課題も。

Mlit001047128pdf33

飛行ルートの問題だけクリアされれば増便が可能になるわけではなく、

  • 新飛行ルートによる増便(年間3.9万回)には、駐機場の増設が必要。
  • 駐機場増設用地として使えるのは旧整備場地区のみ。(場所的に、航空機の滑走路横断が頻発する問題あり)
  • 国際線ターミナルビルの固定スポットから搭乗できる比率の大幅低下(現状97%→70%)

のような課題も挙げられています。

ACI(Airports Council International 国際空港評議会)という団体が毎年発表している空港ランキング。

2013年の旅客数

Passenger Traffic 2013 FINAL (Annual)
http://www.aci.aero/Data-Centre/Annual-Traffic-Data/Passengers/2013-final

羽田は、シカゴ・オヘアを抜いて世界4位になっています。(1位アトランタ、2位北京、3位ロンドン・ヒースロー) さまざまな制約もあるなかで、羽田空港が実は世界最大級の運用を行っていることは、特筆に値します。

一方で、航空機の発着回数について見ると、オヘアの88万回(2位)に比べて、羽田は半分以下の40万回(23位)です。

Aircraft Movements 2013 FINAL (Annual)
http://www.aci.aero/Data-Centre/Annual-Traffic-Data/Movements/2013-final

現在、オヘア空港には滑走路が9本ありますが、さらに1本新設して、2本を廃止、最終的に8本の滑走路(東西に平行する滑走路3組+交差して平行する1組)に再編する工事が進行中。

しかし、シカゴ2空港(オヘア、ミッドウェイ)のフライト遅れは全米でも最悪レベル。遅延原因の一つとして発着ゲートの不足が指摘されており、専門家から「もう新滑走路はよいから、ゲートを増やすべきだ」という意見も出ています。(現在189ゲート、5ゲート新設予定あり)

新滑走路に伴う飛行ルートの騒音が想定外のエリアまで拡がって苦情が急増している、との報道も。

2016.4.4にACIから2015年の速報値が発表されています。旅客数で、羽田は5位(2014年4位)、シカゴ・オヘアは4位(2014年7位)と逆転されました。

ACI releases preliminary world airport traffic rankings - Apr 04, 2016
http://www.aci.aero/News/Releases/Most-Recent/2016/04/04/ACI-releases-preliminary-world-airport-traffic-rankings-

上記ACIの速報をもとに、旅客数上位空港の比較をしてみました。(大雑把です)

Aci2015rankrwy


2016.4.19

「南風時新飛行経路の高度引き上げ」などの修正案が発表されました。

「好天時」限定で使用されるもので、それ以外は従来案のままです。

最近、ヒースロー空港で、通常3度となっている進入角度を3.2度に上げるsteep approachが試行されていました。そういう方法を考えているのか、と漠然と思っていましたが、まったくの見当違いでした。

ヒースローの試行内容については、下記記事参照。

Heathrow launches steeper approach trial to reduce noise
http://your.heathrow.com/heathrow-launches-steeper-approach-trial-to-reduce-noise/

Southerlyrev1604(図:国土交通省)

これだけだと細かいところがわかりませんが、現在行われている北風好天時運用とよく似ています。平行滑走路への同時ILS進入に伴う制約を回避するために、片方ないしは両方の進入をvisual approachとするもの、と理解しました。

上述、ヒースローの試行については、パイロット団体(BALPA)が「騒音はかえって悪化する」と批判しているとの記事もありましたが、結果発表に注目したいと思います。

通常より急な進入角度と言えば、障害物のために3.5度となっているサンディエゴ国際空港(リンドバーグフィールド)があります。予備知識なく行ったこともあり、着陸はいたって普通に感じられました。1日の発着が800回もある主要空港なのに、滑走路は1本だけ。敷地もかなり狭いです。

ダウンタウンから至近という好立地ですが、街中を1000フィート位の高度で通過する着陸機の騒音はすさまじいものがありました。これは、進入角度のためというよりも、コンクリートやアスファルトで覆われた市街地という環境が影響していると思われます。


続編↓

羽田空港新飛行ルート(南風時)と管制空域(2)
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/newroute2201608.html

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