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MAS17 (EHAM-WMKK)の事件を受け、東部ウクライナ空域の航空路閉鎖

ウクライナ上空でのマレーシア航空 MAS17 (MH17)便の遭難について。(7月17日13:20 UTC)

ユーロコントロールによれば、事件のあった飛行ルート(RNAVルート L980上のTAMAK付近)は、ウクライナ当局が地上からFL320までの高度について閉鎖のノータムを出していましたが、遭難機はその上のFL330を飛行していたものです。(下記引用はFAA NOTAMSから。これは対象航空路を告知したものですが、他に空域範囲を示したノータムなど多数出て分かりにくくなっています)

A1493/14 NOTAMN
Q) UKDV/QARLC/IV/NBO/E /260/320/4820N03716E119
A) UKDV B) 1407141800 C) 1408142359 EST
E) SEGMENTS OF ATS ROUTES CLOSED:
T242 NALEM MASOL     M996 ABUGA GUKOL
G476 MASOL OLGIN     W533 TOROS KUBIR
L32 NALEM KW         P851 LS NESLO
A83 LS DIMAB         L980 GANRA TAMAK
W538 GANRA FASAD     W633 LUGAT MAKAK
L69 LAMIV GONED      W644 DON GETBO
M70 BULIG TAMAK      B493 PODOL FASAD
L984 BULIG FASAD     W531 KOVIL PW
M136 MEBAM DON       M995 OLGIN PENAK
L140 KOVIL FASAD.
FM FL260 UP TO FL320.
CREATED: 14 Jul 2014 15:58:00
SOURCE: EUECYIYN

東部ウクライナのFIRであるDnipropetrovsk (UKDV)内の航空路は、事件後、ウクライナ当局が全高度の閉鎖の措置をユーロコントロールに通告、ユーロコントロールは該当ルートを含む全ての飛行計画を却下している、とのこと。

ユーロコントロールのリリース

MH 17 - Ukraine
17 Jul 2014
http://www.eurocontrol.int/news/mh-17-ukraine

すでにネット上の複数サイトに当該便のフライトプランが投稿され、容易に検索できる状態になっています。下記に引用しました。

(FPL-MAS17-IS
-B772/H-SDFGHIJ3J5M1RWXY/LB1D1
-EHAM1000
-N0490F310 ARNEM UL620 SUVOX UZ713 OSN UL980 MOBSA DCT POVEL DCT SUI L980 UTOLU/N0490F330 L980 LDZ M70 BEMBI L980 PEKIT/N0480F350 L980 TAMAK/N0480F350 A87 TIROM/N0490F350 A87 MAMED B449 RANAH L750 ZB G201 BI DCT MURLI DCT TIGER/N0490F370 L333 KKJ L759 PUT R325 VIH A464 DAKUS DCT
-WMKK1137 WMSA WMKP
-EET/EDGG0017 EDWW0023 EDUU0036 EPWW0052 UKLV0135 UKBV0153 UKDV0225 URRV0255 UATT0347 UTAK0411 UTAA0432 UTAV0507 OAKX0518 OPLR0601 OPKR0616 VIDF0631 VABF0725 VECF0747 VYYF0926 VOMF0930 VTBB1013 WMFC1051 REG/9MMRD PBN/A1B1C1D1L1O1S2 SEL/QREJ DOF/140717 RMK/ACASII EQUIPPED)

Skyvectorで、フライトプラン図を作成してみました。(下記短縮URL、別窓で開きます)

http://goo.gl/OCFDTT

(この短縮URLを実行すると、なぜかルートからOSNが抜けてしまう現象が起きています。)

Skyvectorをgreat circle mapperとして使うには、Flight Planの入力欄に EHAM WMKKとだけ入れて、"Add"すればよいです。(大圏ルート、最短距離を表示したい場合)

ところで、東京発のフライトでUKDVエリアをいつも通過しているのは、イスタンブール行きのTurkishです。日本の各エアラインについては、定期便がウクライナ上空を通過することはありません。

7月17日発のTK51は、事件発生とほぼ同時刻にキエフ上空(今回閉鎖された空域外)を通過していたとみられます。

↓航跡図はFlightradar24 databaseから取得。

20140717tk51

http://www.flightradar24.com/data/flights/tk51/#3d59887

↓は前日7月16日発のTK51便航跡。

20140716tk51

http://www.flightradar24.com/data/flights/tk51/#3d3657f

TK51便で、17日のようにモスクワを通過してキエフに南下するルートは、めったに使われません。

事件発生時刻には、すでにキエフ上空に達していたわけですから、空域閉鎖措置を受けてルート変更を指示されたものではなく、明らかに当初からこのルートで計画していたものでしょう。偶然にしては出来すぎの感がありますが、思い過ごしでしょうか。

(追記、7月20日)

16日にロシアからウクライナとの国境付近の航空路閉鎖のノータムが出ていたとのこと。全高度ではないようですが、TK51については、これを受けてのルート変更だったかもしれません。

V6159/14 NOTAMN
Q) UUWV/QARLC/IV/NBO/E/000/200/5141N03811E160
A) UUWV B) 1407170000 C) 1408312359 EST
E) DUE TO COMBAT ACTIONS ON THE TERRITORY OF THE UKRAINE NEAR THE
STATE BORDER WITH THE RUSSIAN FEDERATION AND THE FACTS OF FIRING
FROM THE TERRITORY OF THE UKRAINE TOWARDS THE TERRITORY OF RUSSIAN
FEDERATION, TO ENSURE INTL FLT SAFETY,
ATS RTE SEGMENTS CLSD AS FLW:
A493 LIRSI-LEMBO,
G915 AGNIN-FORMA,
A131 BODRO-FORMA,
A236 LULED-LUMAT,
R371 LUMAT-LEMBO,
R371 BELIB-KUBOK,
G372 BODRO-BELIB,
A97  TUMIT-NALEG,
R363 ANIGI-KUBOK,
R368 SOMUM-KUBOK,
A279 RASAP-KUBOK,
B921 ROGLA-GOBUN,
B110 RASAP-GOBUN,
G476 RASAP-MASOL,
R374 TUMIT-KANON,
B231 TERBUNY NDB (TE)-KANON,
R808 KOROT-KANON,
B145 BUTRI-KANON.
F) SFC  G) FL200
CREATED: 16 Jul 2014 17:09:00
SOURCE: UUUUYNYX


TK51便、18日発は東側へ迂回。

20140718tk51


情報戦の渦中にあっては、あからさまなネツ造、情報操作も当然のように行われています。「まともな」航空会社は数ヶ月前から現場空域を回避していた、という論調の外電がまことしやかに流され、見事に引っ掛かっている方もいるよう。

Flightradar24は全体の交通状況を再現できるプレイバックを停止しており、個別に確認する必要がありますが、、、下に引用した航跡図は全て出発日が2014.7.16または7.17です。

この縮尺では区別が付きませんが、Flightradar24 databaseで元の図を拡大すると、

  • L980 - TAMAK - A87 (ドネツクの北を通過)
  • L984 - FASAD - B493 (ドネツクの南を通過)

という2つのルートが使われていたことが読み取れます。

L980 - TAMAK - A87

L980tamaka87

L984 - FASAD - B493

L984fasadb493

さらに南のルート M991 - OLGIN - B494 も高トラフィック

M991olginb494


20140716br68

20140716kl835

20140717su503

20140716vs300

20140717sq317


ついには、「L980航空路を北側に逸脱して飛行したのが悲劇の原因」だとする、奇奇怪怪な記事まで公然と流布されています。

(どうやら、著名米国紙のとある記事が下敷きになっているらしい。これがまた間違いだらけのとんでもないシロモノです)

確かに北にズレてはいたようですが、図にしてみるとこの程度です。RNAV5の許容範囲内を飛んでいて「命取り」とは穏やかではありません。

21日から、ようやくFlightradar24のプレイバック機能が復旧しました。プレイバックから拾った位置情報でFlightAwareログの怪しい部分を補って、航跡図↓を改訂しました。(さらに、最後の約10分について、Flightradar24が発表したデータで補正)

Mas17fltawaretrk

http://arctica1.cocolog-nifty.com/fw2/140717mas17.html

Fr24201407171318

FPLで計画していた高度のFL350に上昇させてもらえなかったことが憶測を呼んでいるようですが、"LOVIK M996 MOGRI W538 GANRA L980 TAMAK"のように飛行していたと思われるSIA351(シンガポール航空 CPH-SIN)がすぐ後ろにFL350で接近していたのが理由だとすれば、そのこと自体はとりたてて不自然な状況とは思えません。(もちろん、管制記録の調査は今後間違いなく必要)


FlightAwareのTrack図を”証拠”に挙げて、この便が事件当日(17日)だけドネツク上空を通過する航路を使った、と主張する人もいます。

各ツールの仕組み、特徴、限界を知らないと簡単にだまされます。

FlightAwareの使い方
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/flightawareusage.html

FlightAwareについては、ADS-Bによる追跡範囲が狭く、また、ADS-B追跡が長時間途切れて、その後再開した場合でも、あたかもずっと追跡していたかのような航跡図を提示してきます。(Track Logを開いて確認すればすぐわかる話ですが)

その点、Flightradar24はADS-B追跡が切れた部分は破線表示してくれます。

Flightradar24 Aviation databaseの活用
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/fr24database.html

その後(21日?)FlightAwareのTrack図が改善されました。ADS-B(または、管制機関等からの位置情報)による航跡部分と推測(estimated)ルートが色分けされています。

http://flightaware.com/live/flight/MAS17/history/20140716/1000Z/EHAM/WMKK

やっとFlightAwareが航跡図の仕様変更をリリース。

Improvements to FlightAware Maps & Understanding Map Behavior
http://flightaware.com/news/article/Improvements-to-FlightAware-Maps--Understanding-Map-Behavior/196

仕様変更前後での航跡マップの違い↓ 上:変更前 下:変更後

いずれも2014.7.16のMAS17 (MH17)

20140716mh17flightaware

20140716mh17faware

補足として下記をUPしました。

MH17の事件を受け、FlightAwareがミスリーディングなフライト航跡図の仕様を修正
http://arctica1.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/mh17flightaware.html


7月13日から17日までのMAS17便の航跡(拡大したもの)を下記(Flightradar24)から転載します。

http://www.flightradar24.com/data/flights/mh17/

13日

20140713mh17

14日

20140714mh17

15日

20140715mh17

16日

20140716mh17

17日

20140717mh17


(参考)
ウクライナ上空通過料金

Ukgen4_2_charge

ウクライナ政府を擁護するつもりはさらさらありませんが、通過機から徴収する航空管制料が重要な収入源になっていたかもしれません。重大事件が起きるまで航空路閉鎖に踏み切れなかった理由として考えられます。

ちなみに、日本の「航空航行援助施設利用料」(上空通過する場合)は、15トン以上の航空機について、「通過1 回あたり 89,000 円」

B772の重量をざっと300トン、ウクライナ通過距離を約1200kmとして、上の計算式にあてはめると日本の倍額くらいになります。(何か勘違いしているかも、自信なし)

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