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富山空港のILSが運用休止(9月19日~11月13日)

外国機に加えて、10月16日からANAもRNAV進入を開始しました。一部対象外の機種がありますが、大半の到着機は通常の進入ルートに戻っています。くわしい状況は下記エントリをご参照ください。

10月16日 庄内空港、富山空港でRNAV進入が実施される
http://polar-rte.way-nifty.com/blog/2013/10/syo-toy-rnav.html


8月22日発行の航空路誌補足版(AIP SUP NR094/13「富山ILS の運用休止及び代替措置について」)によると、以下のとおり、富山空港のILSが工事のため運用休止されます。

RJNT-ILS

進入角度を誘導するグライドパス(GP)は元々設置されていませんので、休止されるのは、ローカライザー(LOC)と距離測定装置(DME)です。

期間中は2つの進入方式が使えません。

LOC Z RWY20

LOC Y RWY20

では、何か影響がありうるのか、利用者目線で考えてみます。

LOC Y RWY20

LOC Y RWY20

ローカライザー進入が使えない場合、別の進入方式としては、下図の"VOR A"があります。航空機区分D (CAT D)の段で最低気象条件(ミニマム)を比較すると、ローカライザー進入の「CMV 1400m」に対して、VOR進入では「VIS 3200m」となっています。

VISはMETARなどに出る視程の数字そのままですが、CMVについては滑走路の灯火設備により、VISに1.5(昼間)、2.0(夜間)の係数を掛けて算出されます。(下に貼った換算表参照)

CMVが適用される進入(直線着陸)では、VISが1000m以下に下がっても進入できる可能性があります。一方、使える方式がVOR Aだけになると、大幅にミニマムが高いため、ちょっとした天候不良で欠航になるかもしれません。

VOR A

VOR A

CMV換算表

ここで、富山空港のもう一つの計器進入方式であるRNAV(GNSS) RWY20がローカライザー進入の代わりに利用できれば理想的です。2007年にICAOの決議だか勧告により、2016年までに全てのinstrument runwayにAPV※を設定しましょう、という目標が打ち出されています。その趣旨にもかなうものと思いますが、どうでしょうか。

※APVとは、Approach Procedures with Vertical Guidanceの略で、LNAV/VNAV(Baro-VNAV)進入とLPV (Localizer Performance with Vertical guidance)の総称。ILSではない方法で、つまりはRNAVでする、高度ガイダンス付きの計器進入方式です。

ICAO Resolution A37-11: Performance-based navigation global goals

RNAV(GNSS) RWY20

富山空港RNAV進入のミニマムはローカライザー進入とまったく同じです。

問題になるのが、"RNP0.3 required."という航法精度の指定。富山空港のようにレーダー進入管制のない(ノンレーダー)空港のRNAV進入には航法精度が指定されます。

すでに何度か取り上げていますが、航法精度が指定されたRNAV進入(RNP APCH)の運航許可を取得している航空機が、日本では非常に少なく、富山空港の定期便に就航しているような機種に関しては皆無です。

下図は、お隣新潟空港のRNAV(GNSS) RWY10ですが、こちらは航法精度の指定がありません。レーダーのある空港では、RNP APCHの規格ができる前からこの種の進入方式が設定されていました。こちらは「運航承認」という別の枠組みで運用されているそうです。

RNAV(GNSS) RWY 10

8月6日KAL763(仁川→新潟)はRNAV進入で新潟に到着(航跡図)(オーバーラン事故の翌日)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/130806kal763.html

諸外国では、航法精度を指定するRNAV進入(RNP APCH)に一本化する方向になっているようであり、富山空港に飛来している中国機、韓国機などもRNP APCHの許可を受けているものが少なくありません。登録国で許可を受けていると、他国でもその種類の進入を行うことができます。

たかだか2カ月間のこととはいえ、ずっと晴天続きというわけにもいかないでしょう。願わくは、国内線が欠航するのを横目に、外来機が平然と離着陸するというバカげた事態が起こらないことを期待します。


AIP GEN 1.5

5. 航法精度が指定された経路又は空域におけるRNAV 航行

5.1 外国航空機以外の航空機は、国土交通大臣の許可を受けなければ、航法精度が指定された経路又は空域におけるRNAV 航行を行ってはならない。RNP AR APCH 航行を実施しようとする運航者は、当該航行を実施しようとする方式毎に国土交通大臣の許可を受けなければならない。これらの航空機には、飛行の経路又は空域に応じ、必要となる航法装置(VOR 受信装置、機上DME 装置、衛星航法装置又は慣性航法装置) を含む広域航法システム(RNP10 航行にあっては、2 式必要) を装備しなければならない。

5.2

1) 航法精度が指定された経路又は空域におけるRNAV 航行を実施しようとする外国の運航者は登録国又は運航国の許可を得ること。

2) 外国の運航者は航法精度が指定された経路又は空域におけるRNAV 航行を行う航空機の装備が5.1 に記載されているものと同等であることを確認すること。

3) 上記1)、2) にかかわらず、RNP AR APCH 航行を実施しようとする外国航空機は、当該航行を実施しようとする方式毎に国土交通大臣の許可を受けなければ、当該航行を行ってはならない。

外国航空機の運航者は、RNP AR APCH 航行の許可を受けようとする場合には、当該航空機の登録国において、RNP AR APCH 航行の許可を得ていなければならない。

(太字強調は引用者)


(9月29日、9月19日以降の状況を追記します)

幸い、悪天候による欠航騒ぎなどは起きていませんが、、、

予告もなく、突然飛行ルートが変わって苦情が殺到とかで、地元メディアが大きく取り上げるという異例?の事態に。

住宅地の上を旅客機が… 無線装置更新でコース変更
北日本新聞 9月26日(木)6時57分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130926-00001958-kitanihon-l16

富山空港、飛行機の一部で着陸ルート変更
KNBニュース 2013/09/26 17:08 現在
http://www.knb.ne.jp/news/detail/?sid=1026
(動画付き、結構長い)

ちなみに着陸の際にはパイロットが目で確認しながら飛行する場合もあって、その際は、これまで通り、神通川に沿ったルートを飛んでいます。

はぁ? IFRキャンセルのことですね。

「アールナブ(RNAV)」では何のことやら説明が難しいとしても、せめて「GPSを使った着陸方法もある」くらいは言ってもらいたいものですが...

そして、

実は、前回の工事が行われた平成9年にもこのルートは使われていました。

この件は、たまたま1998年当時の紙チャートが手元にありました。

VOR/DME A 1998

現在のVOR Aにあたる"VOR/DME A"はVOR直上(俗に言う「ハイステーション」)から進入開始する高度が「3000ft以上」でした。STARの"TOYAMA ARRIVAL"についても、MEDICを経てVORまでつながっており、MEDICとTOEの高度制限が共に「3000ft以上」となっていました。

TOE ARRIVAL(こちらは2003年のもの)

MEDICが3000ftならばIFRキャンセルもしやすく、VOR上まで来てグルグルしなくても十分に高度処理できるので、飛行ルートがかなり違っていたかもしれません。(いまさら確かめようもありませんが)

ところで、ハイステーションという用語、日本ではよく聞きますが、公式情報に定義などが見あたりません。AIM-j(少し古い。期限切れの版)にも出ていません。ICAOやFAAの管制用語も調べましたが、そうした用語はないようです。

「管制業務処理規程」に下記の例文があるものの、用語集には掲載なし。

d 管制間隔設定上計器進入を行っている到着機に対して特定の高度を遵守させる必要があるときは、進入許可発出時に必要な高度指示を行うものとする。ただし、当該機が計器進入方式に定められている最高高度、最低高度又は特定高度を遵守することにより管制間隔が設定される場合は高度指示を行う必要はない。
〔例〕Cross high station at 8,000.

航空事故調査報告書(JA5243、1983年、仙台空港、レーダー進入管制が休止中の事故)に、

高度7,000フィートで仙台VOR局上への到達を通報し、引続き計器進入方式のための待機経路に入り、同経路でハイステーション(VOR局上の最低待機高度3,000フィート)へ降下した。

との記述が見られます。(最低待機高度:チャートではMHAと表記)

本題に戻って、FlightAwareのデータで作成した航跡図です。

9月20日ANA885便 (B787-800)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/130920ana885.html

9月24日AAR128便 (A321)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/130924aar128.html

ANAは"VOR A"、アシアナは"RNAV(GNSS) RWY20"で進入したものと思われます。

航跡の時刻はUTCです。高度は気圧補正されていないため、進入チャート上の高度制限を守っていないように見える部分があったりします。Flightradarの高度も同じです。大まかには、気圧1インチの変動につき、1000フィート差になるそうです。したがって、A2992で6000ftなら、同じ高度がA2892(979Hpa)では約7000ftと表示されます。

”見物人”としては、気圧が低いときは高めに表示される、と知っていれば十分でしょう。先日の台風接近時は、羽田に着陸寸前の機体で高度が1200ftとかになっていました。「Flightradar24の高度は誤差がある」という投稿を見かけましたが、ADS-Bから出されたデータそのもので、誤差ではありません。

9月29日CAL170便 (B738)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/130929cal170.html


IFR Cancel (FlightradarではSquawk表示が"1200"に変わります)の航跡

海上で1周して降下↓

9月29日ANA885便 (B787-800)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/130929ana885.html

通常とほぼ同じ飛行ルートも可能↓

10月1日ANA885便 (B787-800)
http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/131001ana885.html


ローカライザー(LOC)とRNAVのコースはほとんど同じですが、LOCが滑走路方位に対して0.9度オフセットしているのと比べて、RNAVにはオフセットがありません。(RNAVは地上設備を必要としないので当然ですが)

MEDICからLOCまで、MEDICからRW20までの比較、微妙な差があります。(枠内で縮小・拡大、スクロール可)

以前に何回か富山行き便に搭乗したとき、オフセットの修正がわかるか、と身構えましたが、まったくわかりません。これが3度くらいのオフセットだと、かなり大きな修正に感じられます。むかし羽田34のILSが3度オフセットしていたことがあります。見えたらさっさと修正する感じの人、滑走路の延長と交差するところぎりぎりまで待ってぐっと修正する人、いろいろでした。


実際の飛行状況、事例については下記ブログのレポート、動画が力作、秀逸と思います。ご一読をおすすめします。

ローカライザー休止中の富山空港 - VOR-Aアプローチを行うボーイング787を撮ってみた
http://whitewing681.blogspot.jp/2013/09/vor-a787.html

さらに、「日本におけるRNP-APCH認証にはSBAS(MSAS)の搭載が必要」とは、たいへん貴重な情報に感謝。(規定類や公式情報を八方探しても、どこにも書いてありません!多分)

日本のエアラインは、事実上、RNP APCHの許可を取らせてもらえないことがはっきりしました。状況的にそれしか考えられませんが、文書にはなかなか”しっぽ”を出さないので、ずっと謎になっていました。

富山でRNAV進入やっている外国機はSBASなんか持っていません。つまり、露骨なダブルスタンダード。自ら決めた規定や基準を(自国向けには)ネジ曲げて運用していることにもなります。(「RNP APCH 航行に関する運航基準」参照)

どこにも書いてないので、以下、趣味的関心のままに邪推しただけです。

日本のSBASであるMSASはうまく行っていません。おそらくは、それが背景にあるのでしょう。

失敗の理由は「電離層遅延が予想以上で、モゴモゴ」と説明されていますが、ずっと前からGPS衛星は飛んでいるのだし、事前にわからなかったとは信じられません。で、SBAS最大の利点であるLPVの実施はいっこうにメドが立たないまま、離島航空路の確保とかいう題目を掲げてMSAS受信機の追加装備に補助金を出すという政策をやっています。その関係上、MSAS受信機がなくても(ABASで)RNP APCH可能、となっては整合性が取れないのでマズイ、ということかも。

それにしても、ジェネアビに冷淡なJCABがなぜシャカリキになってMSAS整備を進めたのか、何かウラがありそうな気もします。

(参考)
将来の航空衛星システムの在り方について(定期航空協会、2009年)
http://www.teikokyo.gr.jp/pdf/20090826_system.pdf

航空機分野での衛星航法システムの利用(三菱MRJ)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seisan/juntenchoueisei/004_05_00.pdf

では、日本でSBASを使うメリットは? ひょっとして、RAIM outageを気にしなくてよい、という点だけ?なんでしょうか。2007年にMSASが運用開始した当初は何かと宣伝もしていたようですが、今や「MSAS 運用状況」とか検索しても、ほとんど何も出てきませんから、さもありなんです。

(参考)
MSASの運用状況と地殻変動への対応(GPS/GNSSシンポジウム2011)
http://gnss-pnt.org/sympo2011kaiin/asou.pdf

しかし、ICAO決議にもとづく国際的な取り組みを考えると、いつまでもRNP APCHはMSAS装備機限定というローカルルールを押し通すわけにもいかないと思いますが、これからどうなるでしょうか。

日本エアコミューター(JAC)のQ400が数少ないRNP APCH許可取得機となっていますが、ボンバルディアのリリースに以下の記載がありました。

In addition, together with launch-customer Japan Air Commuter, Bombardier has developed a Space- Based Augmentation System (SBAS) option for the Q400 NextGen aircraft. SBAS, also referred to as Wide Area Augmentation System (WAAS) in North America, provides greater navigation capabilities, less reliance on groundbased navigation aids and the potential for more efficient air routes, resulting in both time and fuel cost savings.

Q400 NextGen - Better Platform Better Value (Bombardier)
http://www2.bombardier.com/en/3_0/3_8/BCAU/v22_iss_2_2011/story06.html

なんと、Q400のSBASオプションはJACがローンチ・カスタマーだったとは驚愕。でも、せっかくSBASを付けたのに、SBAS最大のウリであるLPVは使わ(え)ないという、笑えない状況です。

カナダのエアラインがQ400のFMSをSBAS対応に換装して、LPV進入を始めるという記事↓
Porter Airlines Deploys Universal FMSs on Q400 Fleet
http://q400drivers.com/news/porter-airlines-deploys-universal-fmss-on-q400-fleet/

詳細はわかりませんが、SBASを使わない(つまりABAS)でRNP APCHが可能なQ400のオプションもあるようです。(DLHなどのQ400にRNP APCH可能な機体あり)

いろいろ略語があってわかりにくいので、一部重複しますが、RNP APCHについて復習します。

垂直ガイダンス付きのRNP APCH※は2種類に分かれます。

※進入チャートの標題は"RNAV(GNSS)"です。

APV Baro (APV Baro-VNAV, LNAV/VNAV)
 高度ガイダンス(グライドパス)にVNAV機能を使うもの。主にライン機向け。GPS信号補強(augmentation)はABAS(RAIM)による。

LPV (APV SBAS)
 高度ガイダンスにGPSから得た高度を使うもの。主に小型機、ビジネス機向け。GPS信号補強はSBASによる。APV Baroよりも低いミニマム(CAT 1 ILSと同等)を実現。
 SBAS(静止衛星を使うGPS信号補強システム)として、米国のWAAS、欧州のEGNOS。主要なライン機種でSBASは使われていない。エアラインの利益代表IATAは、SBASのコストを負担させられることに強い警戒感を示している。

RNP APCH Minimum

ICAOやIATAがAPV(垂直ガイダンス付きのRNAV進入)の普及に腐心しているのは、非精密進入(NPA)や周回進入をAPVに置き換えることでCFIT防止に役立つという安全性向上の目的があります。最近、パリで行われたという国際会議のIATA資料は、垂直ガイダンスなしのRNAV進入(LNAV進入)では、大してCFIT防止の効果はないので、LNAV/VNAVが必要と述べています。

IATA、SBASを支持せず↓

IATA does not support SBAS


LPVのわかりやすい説明(動画、宣伝)

Understanding WAAS & LPV: What is LPV
http://www.youtube.com/watch?v=ET11gxofDbs


10月9日ANA891の記録

131009ANA891

http://flightaware.com/live/flight/ANA891/history/20131009/1105Z/RJTT/RJNT

VOR進入のMDA 630ftからして、800feetの5/8雲量はきびしいのかも。

RJNT 091219Z 29004KT 9999 -SHRA FEW004 BKN008 BKN015 22/20 Q1015 RMK 1ST004 5CU008 6CU015 A2999

LOCのMDA、RNAVのDA/MDAはいずれも470ftなので、その差は大きいということでしょうか。

航跡図も作成してみましたが、2回も着陸をやり直しているので、線が重なってわけがわかりません。

http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/131009ana891.html

このさい、進入1回ごとに分けた図も作りました。

http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/131009ana891-1.html

http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/131009ana891-2.html

http://polar-rte.way-nifty.com/fw2/131009ana891-3.html

RNAV進入のルートは最終進入ルート(滑走路延長線)の参考として入れています。

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